毎日普通に生きる事
annhui-2.jpg

「あいち国際女性映画祭2009」で 9月4日に見ました
今年の第28回香港電影金像賞(香港アカデミー賞)の監督賞と
周迅や林嘉欣を退け 鮑起靜が主演女優賞をとり
脚本賞と助演女優賞の4部門受賞作品だったので 
是非見たくて 平日の朝の時間帯だったので 仕事を休んでみました

生きていく日々(天水圍的日與夜)

監督 許鞍華(アン・ホイ)
出演 鮑起靜(パウ・ヘイチン)陳麗雲(チャン・ライワン)梁進龍(ジュノ・リョン)
2007年 香港作品



見終わると じんわりと温かい気持ちが心に満ちていました
慎ましやかだけれど 誰もが優しさを忘れてない
豊かで無くても 居心地の良い幸せな家庭が描かれていました

何時ものように最後までネタバレします。。。
でもここにはバレて困るネタは無いのですが 嫌な方はここまで
私たちが何時も訪れる香港は ビクトリアハーバーに浮かぶ
巨大な美しい高層ビル群の場所だけれど
ここには見慣れた尖沙咀も中環も旺角も全く出てこないのです

天水圍(ティンソイワイ)って一体どこにあるのだろう
映画を見ていてまずそれがとても気になりました
なので帰って直ぐにそれを調べました
香港新界の元朗区の西部に位置する新興住宅街
KCR西鉄線沿いに天水圍駅はありました
約10kmの距離で中華人民共和国シンセン市になるわけで
映画を見た後 昨年一緒にシンセンに行った友人が
「シンセン辺りかと思った」のは正解でした(笑)

1990年代に多くの高層住宅が建設され
近代的なニュータウンが形作られたのです
住民の失業率が香港で一番高く 自殺や家庭内暴力が多発して
悲情城市という不名誉な呼び名があるようです
「悲情城市」というと 直ぐにトニー・レオンの哀しみの表情が目に浮かび
戦後の台湾の悲劇を描いたあの名作が思い出されます
或いはサム・リーの「メイド・イン・ホンコン」を見た時の様な
暗く殺伐とした 低所得者向け団地の荒廃を思いうかべますが
この映画では 特にそんな影は感じられませんでした
側には綺麗で活気があるスーパーがあり 
香港市街地への地下鉄も通り 住み易そうな明るい団地に見えました

f_1983677_2.jpg

公屋(=政府の公営住宅)に住む母(クワイ)と息子(ガーオン)の
2人家族の 夏休みから中秋節にかけての生活を淡々と
本当に何も特別な事のない平凡な日々の続きを描いたものです

映画が始まると 最初の頃は息子は今風の引きこもりなのかと
思わせぶりだけど 実は夏休みだから家で寝てばかりいるだけ 
何処の世界の子供も同じですね

クワイの母親の誕生日会に行く場面では 親類は皆お金持ちなのに
クワイ母子だけが貧乏な境遇なのか とここも思わせぶり 

でも見ていくうちに 息子のガーオンは友達に好かれてるし 
先生にも気に入られているし 成績も良いらしいってことが
なんとな~く薄々わかってくるのです 

クワイは14歳から働き出して弟たちの学費を稼いだ優しい姉で
弟達は出世して何不自由なく暮らしているみたいだから
姉であるクワイの生活を気遣ってくれているようだとわかってくるのです

そんなある時
朝早くからスーパーで働くクワイは スーパーに仕事を求めてやって来た
老女が同じ団地に住むと知り 一人暮らしの彼女を何かと助けるのです

16cc5d1c22a3cb754c302c91383e8d6c.jpg

親しく付き合いだしたある日 新しいテレビが欲しいけど
配達料は割高だし 重くて持って帰れない老女のために 
家で寝ている息子を携帯で呼び出し 運ばせるのです 
急に母に呼び出されて テレビを担いで家まで届ける事になっても
息子は嫌な顔ひとつしないで ついでにチャンネルあわせもします

クワイの母が病気で入院したり 従兄の母が亡くなったりします
でも 特に大事件は起きなません。。。
ただお葬式で 悲しむ家族の姿を見ていて
クワイは夫が亡くなった時の事を思い出します。。。

ガーオンは仕事で多忙の母にかわって 
入院するおばあちゃんのお見舞いに せっせと出かけます
彼はいつも とても素直な誠実さで人に接する事が出来るのです
何よりも 一生懸命働いて自分を育ててくれる母親を愛し
母親が作ってくれる夕食を一緒に食べる事を大事に思っていますから
友人たちとゲームをしたりするけど でもちゃんと夕飯までには
家に帰ってきて母と食事をします(笑)
またある日は キリスト教のボランティア学習に出席します
でもやはり さっさと家に帰ってきて 母と食事をします(笑)
ガーオン役のジュノ・リョン君が 正に爽やかそのもの 

こんないい息子がいてクワイは本当に幸せです

何かあるとすぐに会えるところに親兄弟がいて
羽振りの良い叔父たちは ガーオンに香港で進学できなかったら
海外に留学させてやる お金は心配しなくていいと言います

クワイの母は時々病気で入院するけれど
「燕の巣入りおかゆが食べたいっ!」 と駄々こねると
ちゃんとそれが届く恵まれた環境にいるから心配いらないし
実際 だからクワイはなかなか見舞いにいかない(笑)

クワイは元気に働けて イライラしたり鬱々としたりすることなく
毎日生きているのです 考えてみればそれってとても幸せですね
健康な身体で 優しい息子がいて 身内も皆平和です
勿論 こんな幸せは何時崩れるかわかりません
でも そんな暗い事は思わずに 今日が幸せに普通に生きられたら
ただそれだけで有難い とクワイは思ってる気がします

一人暮らしの老女には 実は可愛い孫がいるのだけれど
娘が突然死んでしまって お婿さんが再婚して
新しいお嫁さんと子供と家庭をもってしまったので 孫に逢えない
クワイはそんな淋しい老女の背中を押して 
一緒に 沙田に住む孫と婿に会いに行きます
今の妻への配慮から 義母に余所余所しい婿は
結局 孫に会わしてくれず 失意のうちに帰る老女の手を
クワイは 帰りのバスの中で 黙ってただぎゅっと握りしめるのです

そして ガーオンは無事に希望の大学に進級できて
中秋節のお祝いを クワイは老女を家に招き 
三人で 楽しく和気藹々と祝うところで映画は終わるのです

三人にとっては 結構いろいろあったと思いますが
傍目には特に何かが起きたわけではない 日々の繰り返しの
単調なストーリーなのに 最後まで画面から目が離せませんでした 

香港の低所得者層が多く住む公屋に生きる ごく普通の小市民の
なんでもない日常の中に隠された人々の いろいろな思いを 
さりげなく淡々と描いた作品ですが 後味がすごく良いのです
日常の断片が連なっていくだけなのに 温かい思いが満ちていました

私はとても好きなタイプの作品です 見て良かったです
でも 少し何も無さ過ぎるかもしれません(笑)



スポンサーサイト
【2009/09/10 22:41 】
香港映画 | コメント(18) | トラックバック(1)
<<ロマンチックな王女 | ホーム | 「モダンな不夜城」のひこ>>
コメント
ジーンズをゴミに出そうとして、もったいなくてゴミ箱の上に置いて、
その後抱きしめて泣くシーンがありますね。
あそこで、不覚にももらい泣きしました。
こういう作品こそ、ル・シネマあたりでやって欲しいですね。

【2009/09/10 23:08】
| URL | 多謝。 #SO3OMlUc[ 編集] |
多謝。さん こんばんは

亡くなった旦那さんのジーンズでしたよね
何だかその仕草が可笑しくて 
それでいて最後は切なかったですね

小さなエピソードの欠片が 胸のあちこちに落ちてます
【2009/09/10 23:54】
| URL | usako #dN1wHbUA[ 編集] |
こういう一般公開されてない映画は、見る機会が無いので、usakoさんのレビューは楽しみです。
小さな日常の中の、さりげないエピソードの積み重ね、が何だか胸うつ作品って素敵です。
全国で見えるようになると良いですね。
【2009/09/11 01:20】
| URL | ちほ #PJakg2V.[ 編集] |
usakoさんのレビューを読んでとっても見たくなりました。
普通に生きてくって1番幸せなことなんだな~と思いました。
【2009/09/11 03:28】
| URL | きひ #-[ 編集] |
usakoさん、TBさせていただきました♪
日常生活を綴るのみの物語故、感想を書くと「えぇっこれでステキな作品なわけ!?」と
書いている自分ですら思ってしまうのですが(笑)実際ステキな作品なんですよね。
阿貴の毎日はこざっぱりと潔くこれこそが人間本来の幸せな生活だなぁ・・・としみじみ感じました。
私たちの生活にはどうでもいいムダが多すぎますよね。
毎日の夕飯、月餅、ドリアン・・・親子2人の食事シーンがたくさんで
それだけでも幸せを感じてしまいました。
【2009/09/11 08:07】
| URL | sabunori #JalddpaA[ 編集] |
二度目のウィルあいちでそれもホールでの鑑賞をお誘いいただき感謝感謝の謝霆鋒!
2年前の玉観音わ会議室でパイプ椅子だったし(爆)

一般公開わない?作品をスクリーンで見れる喜び!!
ありがとうございましたm(__)m

【2009/09/11 09:17】
| URL | ソン #-[ 編集] |
usakoさん、こんにちは♪

何時もながらusakoさんのレビューは、判りやすく見たくなります。
レンタルDVDになる事を気長に待つとします。

元気に働ける健康な身体があって、息子がいい子で心配無くて、親子仲良く暮らせる幸せって、本当に一番なのですね。
私もそんな幸せなお母さん目指します。
【2009/09/11 11:56】
| URL | nabi #FcZfbeYc[ 編集] |
うーん見たいなあ。

ので、途中からは読むのを控えましたけど・・・。

香港版、買おうかなあ。

買って見たら、usakoさんのレビュー、読ませていただきますね。
【2009/09/11 17:50】
| URL | やっほー #-[ 編集] |
ちほさん こんばんは

本当に こういう作品も一般公開して欲しいですね

今は不景気で 映画界も大変ですから
益々香港映画を配給してくれるところが減り
公開は難しいようですが 諦めずにいましょうね
【2009/09/11 20:54】
| URL | usako #dN1wHbUA[ 編集] |
きひさん こんばんは

私の読みにくいレビューで申し訳ないです

普通に生きる事も 実際は大変ですよね

この親子は 見ていて気持ち良いですよ
【2009/09/11 21:55】
| URL | usako #dN1wHbUA[ 編集] |
sabunoriさん こんばんは

本当に実際ステキな作品でした

最初は危ぶみましたけどね(笑)

アン・ホイ監督って 結構毒吐きますから

私たちの生活にはどうでもいいムダが多すぎますよね
> 私など無駄の塊みたいなものです

そうそう 香港に詳しいsabunori さんならご存知かな
最後に皆が食べてた果物は何でしょう美味しそうで気になりました 
【2009/09/11 22:04】
| URL | usako #dN1wHbUA[ 編集] |
ソンさん こんばんは

ウィルあいちホールは見易いし 楽でいいわよね
気持ち良過ぎて 少しアレだったかな(爆)
ソンさんには ヤムヤムが出る「天水圍的夜與霧」の方が良いかも
打って変わってDVから殺人まであるようで。。。寝る間も無さそう
でも私も見たいです この同じ場所でそんな怖い事が起きるなんて。。。
対比がスゴイですよね 映画祭でやらないかな。。。
【2009/09/11 22:19】
| URL | usako #dN1wHbUA[ 編集] |
nabiさん こんばんは

レンタルDVDになる事>あると良いですね。。。
配給会社が倒産したりしている時代なので。。。
益々香港映画の扱いが心配です

是非幸せなお母さん目指してくださいね
【2009/09/11 22:43】
| URL | usako #dN1wHbUA[ 編集] |
やっほーさん こんばんは

ええ是非見て下さい
広東語の分かるやっほーさんなら
香港版で十分ですね
広東語の世界ですから v-221
【2009/09/11 22:46】
| URL | usako #dN1wHbUA[ 編集] |
ご無沙汰をしていました。
この作品は映画祭で見ましたが、後味の悪かった「おばさんのポストモダン」と同じ監督が、とても気持ちの良い作品を作るのに驚いた記憶でした。
今回レビューを拝見して、やはり本当に普通の日常が描かれた映画だったと、思い出しました。
もっと多くの人に、香港映画にもこんな作品が有ると知って欲しいので、是非一般公開して欲しい作品です。
あのドリアンを手際良く切り割って、「良い香り」という場面は、中々忘れられないです。(笑)
【2009/09/12 09:35】
| URL | megu #gE./HRlE[ 編集] |
meguさん こんばんわ

映画祭でご覧になったのですね
監督が来日されてましたよね 羨ましいわ

本当に心地良い作品でした
こういう何気ない繰り返しの中から
きらきらこぼれる幸せな気持ちが
とても見ていて良かったです
【2009/09/12 21:06】
| URL | usako #dN1wHbUA[ 編集] |
usakoさん、またまたお邪魔します。
最後に阿貴たちが食べていた果物って何だったかしら・・・?とVCDを観直してみました。
あのザボンのような大きな柑橘類の果物でしたね。
ゴメンナサイ。私もわからないわ~。
皮が厚くてむくのが大変そうだったけどここでもガーオンはきっちりいい仕事してましたね。(笑)
【2009/09/16 09:12】
| URL | sabunori #JalddpaA[ 編集] |
sabunoriさん ありがとうございます

そうですか 香港に詳しいsabunori さんも判りませんか
きっと普通の柑橘フルーツなんでしょうね
とても美味しそうだったもので。。。
ブンタンみたいな 皮の厚い 水分の多いフルーツかな
私 大好きなんです
【2009/09/16 22:09】
| URL | usako #dN1wHbUA[ 編集] |
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://hikomei.blog56.fc2.com/tb.php/1097-a8479627
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
天水圍的日與夜(生きていく日々)
天水圍ってバスの行き先やらでよく目にするものの、 一体どこにあるのだ?と調べてみたら・・・ なるほど、MTR西鉄線で元朗よりちょいと先、屯門の手前のこの辺りだったか。 阿貴(鮑起静:バウ・ヘイチン)は夫に先立たれてスーパーマーケットで働きながら 天水... 龍眼日記 Longan Diary【2009/09/11 07:55】
| ホーム |

無料カウンター